欧州特許条約のもとでは、ビジネスメソッドは特許を受けることができないとした欧州特許庁抗告部判決

1 . 2000年9月8日、欧州特許庁抗告部は、ビジネスメソッドそのものは特許を受けることができないことを確認した。一方、経済活動の遂行や経済活動の支持に適している装置類が特許を受けることのできる発明範疇に入ることは十分可能であり、それらの特許性を排除するものではないことを付け加えた。


2 .
抗告部に審理請求されていた本事件(T0931/95)の特許請求の範囲は"(社内)年金給付管理メソッド"及び"(社内)年金給付管理システムの為の装置"に関するものであった。

抗告部は、「請求項1は、全く技術的特性を欠いており、内容はビジネスメソッドそのものである。よって欧州特許条約52条(2C)の定めるところにより特許を受けることのできる発明の範疇から除外される」と結論した。 また「請求項5と6は装置に関する請求であり、技術的特性を有しており、特許を受けることができない発明として除外することはできないが、当業者(ソフトウェアー開発業者、か応用ソフトプログラマー)で、本件の年金給付システムの概念と構造を知っているものならこの請求項の発明は自明であるので、進歩性に欠ける」として拒絶することを結論した。

上記決定は言いかえれば、ビジネスメソッドをただ単に、ソフトウェアー上や、プログラム装置において実行するだけでは、それに特許性があると判断するには十分ではない。特許性を獲得するには、コンピューターを使用したビジネスメソッドの実行が、コンピュータプログラムについて一般知識を持っているソフトウェアー開発業者にとって、自明でないことが開示されていなければならないということであろう。

本判決で、欧州特許庁抗告部は技術的特性があるかどうかが特許を受けることができる要件の一つであることを示した。

抗告部は、「"技術的特性"を発明が有していることが欧州特許を受けることができる条件の一つである」と、欧州特許条約に明確に規定されていないのは確かであるが、「"技術的特性"は、欧州特許条約のもとでは、発明が備えていなければならない暗黙の要件の一つであると」と明言した。


3 . 本件の場合、データプロセッシング手段の使用が請求項1に記載されているが、それについて抗告部は、「"全く非技術的な目的の為に、あるいは/そして、全く非技術的な情報を得る為に、技術的手段を用いること"それのみだけで、その手段が技術的特性を備えていると判断することはできない」と結論した。抗告部は更に、「請求されている方式のどの段階においても、特別の技術的問題を解決したり、何らかの技術的効果を達成しているとは判断できない」とも指摘した。

しかしながら、コンピュータなどの装置に関しては、それがどの産業分野向けであろうとも、それにふさわしい形にプログラムされたコンピュータシステムであるならば、有形の装置を持っているはずであり、物理的な単位を構成しているはずであり、よって、技術的特性を備えることが可能である、と付け加えた。

さらに、興味深いのは、特許を受けられる発明であるかどうかを判断するのに、これまでの判例が認めてきた、いわゆる"どの部分が発明としての寄与部分か、を探る問題接近方法"について、抗告部が批判した点である。その方法とは、先行技術(公知技術)の特徴と審査対象の出願が開示する発明の特徴は区別のできるものでなければならず、また新しい特徴が公知技術に比して何らかの技術的寄与のできる性格を持つべきだという従来のアプローチの仕方を言う。(寄与アプローチについて抗告部は既に何度か最近の判決で同様の批判を行っている)

今回抗告部は、発明が特許を受けられるべきものか、特許性がないものと排除されるべきものかを判断するにあたって、新しい特徴と公知技術の特徴を区別する必要はないと改めて定義した。即ち、抗告部は特許を受けられる発明かどうかの審査範囲を公知技術の特徴にとどまる発明部分にも適用し、発明全体が技術的特性を持つかどうかによって判断するべきであると確認し、従来の方式に基づいた解釈に比べ範囲を広げたことになる。

© Cabinet Beau de Lomenie - JJJ - 2000年12月
翻訳渡辺恵子


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