コンピュータープログラムは特許を受けられるのか?欧州の立場-最近の論議に果たして意味はあるのか
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2000年11月20日から29日まで欧州特許条約改正審議の外交官会議がミュンヘンで開催された。
本会議の議題は多数に上ったが、議題のひとつがコンピュータープログラムの特許性についてであった。特許を受けることができない発明のうちで特にコンピュータープログラムそのものを挙げている現行欧州特許条約52条からコンピュータープログラムを削除したいという欧州特許庁の強い希望にも関わらず、この改正提案に対し白熱した議論が交わされた結果、本件については現状維持が確認された。本件改正議題は次回の欧州委員会指令まで待たれることとなった。
コンピュータープログラムに特許性を認めることに特に反対しているのはLinuxを通じたコンピュータープログラム自由使用を主張する団体で、暫定的にせよ今回の戦いは彼らの勝利に終わった。彼らの主張は、しかし、欧州特許庁のコンピュータープログラムに対する審査態度と抗告部決定などをよく知らないのと、コンピュータープログラムに特許を与えるのに寛容な米国特許庁と欧州特許庁の審査基準に差があることについて無知であるところから来ているというのが我々の意見である。
"人間が太陽の下でやることはすべて特許になる"という態度の米国裁判所に比べ、欧州特許庁抗告部は、プログラムの特許性に関しては、情報システムにおいてますます比重を増す技術的発展に適応した技術発明には特許を与えるべしとの特許権の第一の目的に沿った、明確でしかも熟考を重ねた基準を定義した。
1998年のいわゆるIBM決定(T1173/97及びT935/97)以来、欧州特許庁はコンピュータープログラムを含む請求項からなる特許出願に特許を交付している。またそれ以前にも既にプログラムの特許保護は可能であったが、あくまでもある方式あるいはシステムに関する請求項の中にプログラムが含まれている場合だけで、コンピュータープログラムそのものに特許性が認められることはなかった。
欧州特許条約52条を尊重するため、(IBM決定の際)次のような制限が設けられた。即ち、"コンピュータープログラムはプログラムがコンピューターに搭載されたとき正常の物理的相互関係以上の技術的効果を現すときにのみ特許性が認められる"。
正常の物理的相互関係とはプログラム実行時にコンピューターで発生する電気シグナル(状態"0"と状態"1"の交互変換)のことと解釈される。コンピューターで運転中のプログラムはすべてこの物理的相互作用を出現させる。よってこの相互作用のみによってはコンピュータープログラムそのものの技術的特性を識別することはできないので、そのようなプログラムそのもの(即ち技術的でないもの)は特許から除外される。よって、コンピュータープログラムの特許性の有無は、この単純な相互作用を超えた技術的効果がそこに現れるかどうかを認識することによってのみ判断が可能となる。
欧州特許条約52条の特許を受けることのできない範疇から除外させるのに成功し技術的効果が認められ特許が付与された例としてビデオの映像画質向上という技術効果をもつプログラム(決定VICOM/T208/84)、コンピューターデイスプレイ画面に表示されたインプット用のフォーマットの形をした単一のトランスファースリップに関するプログラム(SoheiT769/92)、あるいはデジタル信号による機械制御にコンピュータープログラムが使用されて特許となった例などがある。
これに反し、ワードプロセッサーにおいてある言葉を他の言葉に単に抽象的にまた言語的に置き換えるだけのプログラムには技術的効果がないとされ特許性を認められなかった(IBMT38/86)例がある。
技術的効果がコンピュータープログラムにあるかどうかを見極めることは必ずしも単純な作業ではない。他の発明分野と同様、審査には高度な知能的厳格さが要求される。欧州特許庁では、特に米国特許庁なら躊躇せず特許を交付したであろう"奇抜な"特許出願は拒絶することが可能なように厳格に審査が行われている。
今回コンピュータープログラムの自由使用を主張する団体は、52条からコンピュータープログラムを削除させないようとの戦いを勝ち取ったけれども欧州特許庁での実際の審査姿勢、即ちコンピュータープログラムに特許を与えるかあるいは特許性を排除するかについての判断基準は今後も変化はないと考えられている。欧州特許庁にとって、欧州特許条約52条からコンピュータープログラムを削除することは、欧州では今なおコンピュータープログラムには特許は付与されないとの一般の認識を改めさせるための形式上の問題として捉えられていた。
問題の本質に関して言及すれば、コンピュータープログラムが特許を与えられない発明の分野から除外されることになれば、プログラムの技術的特性の概念が広がる可能性はあろう。実際、すべてのコンピュータープログラムは上述の物理的相互作用の故に技術的とみなされる可能性が出てくる。この削除が達成された場合には、欧州特許庁が判断の基礎としている"付加的技術効果"の"付加的"の部分に法的根拠がなくなる恐れはあろう。
しかし、特許を受けることができる発明とは、本来、技術的であるだけでは不十分で、新規で、進歩性があり、産業的利用が見込まれる発明でなければならない。抗告部決定931/95が示すように、欧州特許庁では技術的特性のみがしばしば進歩性があるかどうかの判断基準になっているのが実際である。よって、コンピューターに搭載したとき単純に物理的相互作用を来たすだけのプログラム(例えばビジネスモデルを単純にプログラム化しただけのもの)に対し欧州特許庁は、進歩性欠如を理由として特許付与を拒絶するであろう。将来とも欧州特許庁では"付加的"技術効果があって進歩性を有することを正当化できるプログラムだけに特許が付与されるものと予想される。
また欧州特許庁の政策の急変がない限り、コンピュータープログラムそのものを52条から削除すること以外には、技術的特性があることを特に要求する欧州特許庁の審査基準(欧州特許庁現行規則27条、29条)が廃止されるとは想像しがたいので、例えばビジネスモデルのような抽象的概念だけを取り扱うコンピュータープログラムに欧州特許が与えられるとは考えにくい。
この逆に、本当に付加的技術効果があるプログラムに対しては、政治的理由以外には特許による保護を与えない理由はないと考える。情報処理分野においては、専用電子回路(例えばASIC回路)を使った同じ発明がマイクロプロセッサー(またはコンピューター)に搭載のプログラムを使っても可能な場合がしばしばある。先の手段に対し特許が与えられるなら、コンピュータープログラムを使用した発明に特許が与えられない理由はない。
米国特許庁の(コンピュータープログラムに対する)過剰に寛容な方針を批判するプログラム自由使用主張団体の反対の立場はよく理解できるとしても、欧州特許庁は正当で均衡のとれた立場を自ら定めることに成功しており、同団体の反対運動は的外れであると我々は考える
Bernard MAYJONADE - © Cabinet Beau de Lomenie - May 2001
翻訳 渡辺恵子
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