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分割出願に関する欧州特許庁拡大審判部決定 G1/05及びG1/06

2007年6月27日に出された拡大審判部決定G1/05及びG1/06について解説する。

G1/05において拡大審判部に法的解釈が求められていた質問は、“分割出願が元の出願の出願時の内容を越える事項を含むときには、出願自体がもともと無効であったとみなされるべきであり、分割出願の補正によって違反を克服することは不可能なのではないか”というものであった。

この質問が提起されたのは、EPO審判部(T  39/03)が、“欧州特許条約76(1)条は分割出願について規定しているのであり、分割出願に新規事項がない場合のみ出願が認められる、と解釈すべきである”との決定を下していたからである。

G1/06は、もとの出願から分割出願、その分割出願をもとにさらなる分割出願というように分割出願を複数世代にわたって繰り返す場合を取り扱っている。提起された質問は、たとえば3代目孫出願のクレームはその直接の親にあたる2代目子出願のクレーム内容と同一でなければならないのか(nested claims)、というものであった。

G1/05とG1/06は合併され2007年6月28日に拡大審判部としての最終的判断がくだされた。決定の内容は、一言でいうならば、“特許出願は、(たとえ分割出願であっても)それが特許として査定されるべく審査の課程で補正を行うことが認められる”という欧州特許条約の大原則を確認するものであった。

拡大審判部は、“欧州特許条約は、方式審査において出願が無効であることを決定できる法体系を有しているが、実体審査に属する内容が不備であることを理由に出願自体が無効である、ことを宣言できる法体系を有してはいない”、と決定した。

G1/05の質問を拡大審判部に提起した審判部は、英国の旧特許法にあった欧州特許条約76(1)条と同じ内容の条文と、そこから導き出された、“新規事項を含む分割出願は無効に出願されたのであってそのような出願を補正できる可能性は全くない”という英国の判例を持ち出してそのように解釈するべきではないかと提案していた。

これに答えて拡大審判部は、欧州特許条約76(1)条と英国特許法の相違を指摘した。また欧州特許条約123(2)条は、“欧州特許出願あるいは欧州特許は、出願時の内容を超える内容を含むような形に補正を行うことはできない”としているが、特許出願の審査中に本条文違反が見つかったからといってそれが直ちに無効な出願とみなされたことはかつて一度もない。事実は全く逆で、欧州特許出願が特許として査定されるためには新規事項のない出願であることが必要である、というのが本条文の主旨である。この主旨を分割出願にも当てはめることができる。即ち、“分割出願に元の出願時の内容を越える内容が含まれている場合には分割出願が特許として査定されるにあたって新規事項を取り除くための補正をしなければならないのだ”と述べた。

従って、G1/05の質問に対して拡大審判部は、“分割出願が新規事項を含んでいる場合には、親出願が欧州特許庁に係留しているかどうかを問わずに、それを除去するための補正を行うことが可能である。さらに補正に関する審査基準は分割出願も一般の出願とまったく同じ基準が適用される”、と決定した。

またG1/06にて提起された質問に対して拡大審判部は、もともとの出願(Ao)からA1、A1をもとにA2、A2をもとにA3というように何代にも渡って分割出願が繰り返されるとき、たとえばA3が元の出願の出願時の内容以上の事項を含んでいるかどうかを査定するにあたって、直接の親出願にあたるA2がクレームしているものと同じ内容(nested claimes)以上のものを含むかどうかを査定するのではなく、A2の出願において開示されている内容(Whole Contents)をもとに審査すべきである、と決定した。この形の分割出願を繰り返すときにはたとえば孫出願において親出願また祖父出願(元の出願)にあった主要内容を主張できるように元の出願の明細書をそのまま使用することが肝要である。

コメント

G1/05とG1/06は問われていた問題の内容が本質的に同一であったので拡大審判部が同時に決定を下したものである。この決定によって数年来欧州特許システムが抱えていた不安要素が払拭された。

実際、欧州特許庁審査部は新規事項追加について非常に厳しい態度を取っており、用語の使い方をわずかに変えただけでも新規事項追加違反との判断がおりることが多いが、それがため分割出願が上記に述べた経緯から無効出願とみなされ補正不可能なまま拒絶される例が出ていたのである。この事態を避けるため、分割出願にあたっては、発明の単一性を理由にした拒絶通知が来ることを承知の上で元の出願のクレームを再び繰り返す(そのため審査期間が延び費用が重なる)ことを出願人は余儀なくされていたが、今後はその必要がなくなる。

分割出願が抱えている問題は、出願人の利益と第三者の利益の接点をどこに見出すかにある、と思慮される。元の出願の出願日から延々分割出願を繰り返すことによりいたずらに欧州特許出願の延命をはかる作戦をとる出願人の態度は確かに権利の濫用である点について今回の拡大審判部は言及しており、分割出願の早期審査の義務付けあるいはその他の方策を採る必要があること、それが実現できなければ欧州特許条約自体の改正も視野に入れる必要があることを上記決定において言及している。

また拡大審判部は、決定文の中で二重特許の問題についても言及している。元の出願と親出願の保護範囲がどの程度重なってもいいのか、の問題は分割出願の抱えるもう一つの重要問題だからであろう。拡大審判部は、決定文において“二重特許は禁止されている”ことを明確にはしているが、法的根拠は明らかにしていない。今まで幾つかの審判部決定が、欧州特許条約は二重特許禁止に関する法的取り決めに欠けていることを明らかにしている。この問題に関して拡大審判部へ判断を仰いだケースは我々の知る限り出ていないので、審査官が二重特許を排除するのにどのような法的根拠を使用するべきか、について不安要素が残っていると言えよう。

©Cabinet Beau de Loménie/2007年7月


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