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欧州特許の発明の単一性の問題と欧州特許条約実施規則29条改正

本文は、調査及び審査中に欧州特許庁が適用する発明の単一性に関する欧州特許条約規定について説明する。

さらに、ひとつの出願に同じカテゴリーに属する独立クレームを複数含むこと、を制限する方向に最近改正された欧州特許条約実施規則29条(2)についてもコメントする。


I 発明の単一性

発明の単一性の問題は、サーチレポートを作成する際の調査部の最初の検討事項である。

欧州特許条約規則46条(1)は以下のように規定している。

“調査部は、欧州特許出願が発明の単一性に関する基準を満たしていない、と判断したときには、発明について述べている部分についてのみ、あるいは、欧州特許条約82条のいうところの発明群に当たる場合は、最初にクレームされている発明についてのみ、に関する部分サーチレポートを作成しなければならない。調査部は出願人に対し、それ以外の発明群についてサーチレポートが必要ならば、発明ごとに調査費用を別途支払うよう通知する。この追加調査費用は、2週間以上6週間以内の範囲で調査部審査官が指定する期限内に支払われる必要がある。調査部は払い込まれた追加費用に相当する発明についての(追加)サーチレポートを作成しなければならない”。

調査部は、発明の単一性についてより厳しく判断するようになってきており、上記規則46条(1)を適用し、部分サーチレポートを作成する事例が増えている。

調査部は、同規則適用にあたり、以下の理由を挙げることが多い。

-出願特許中1つ目の独立クレームが請求している保護範囲に最も近いと欧州特許庁がみなす先行技術に照らして、その先行技術の提起している問題と同じ問題を解決しない他の複数の独立クレームを(出願特許が)含んでいる。

-複数の独立クレームで請求されている発明群を結んでいる共通の概念が自明であり、しかも、それら発明群の間に、ひとつ、または複数の同じか同等の特別な技術的特徴を含む技術的関係がない。(欧州特許条約実施規則30条(1))

単一性がないと判断されたときは、請求項のうち最初に請求されている独立クレームについてのみの部分サーチレポートが作成される。出願人は、特許出願の中にある他の独立クレーム(従って他の発明)についてもサーチレポートが必要なら欧州特許庁に追加サーチ費用を支払うように、との通知を受ける。

出願人が追加サーチ費用を支払った場合は、完全なサーチレポートが作成される。その後審査部も、単一性の問題については調査部と同じ見解をとることが予想される。BESTプログラム*が実施されてからは、この傾向がますます強くなっている。この場合、他の発明を維持するには一つまたは複数の分割出願をする可能性しか残されない。(*調査部審査官が実体審査も担当する制度)

追加サーチ費用支払を払わず、他の発明群に相当する特徴を従属クレームとして追加することも可能である。(もちろん、最初の独立クレームにそれらが矛盾しないことが必要)主要クレームが有効であると判断されれば、特許は従属クレームつきで他の調査が行われることなく付与される。

あるいは、追加サーチ費用を支払わず、他の発明群に関して分割出願をする方法もある。出願人はもちろん分割出願に関するサーチ費用を支払う必要がある。

部分サーチレポート作成は、出願で最初に請求されている独立クレームに関して行われる。従って、複数の独立クレームを含む出願にあたっては、もっとも重要であると出願人が考える発明を1つ目の独立クレームとして請求することが薦められる。

さらには、独立クレーム形式だけで他の発明群の保護請求をしようとせず、それが可能ならば、1つ目のクレームに従属させる形のクレームも使用することを薦める。追加調査費用を支払うことなく欧州特許庁調査部から完全なサーチレポートがもらえる可能性が高まる。

複数の独立クレームを含む出願にも関わらず、発明の単一性についての問題が調査部から提起されず、完全なサーチレポートが作成されたとしても、この形の出願は審査段階で欧州特許条約29条(2)に基づく困難に出会うことがある。次に説明する。


II 欧州特許条約実施規則29条(2)の変更について

実施規則29条(2)は欧州特許条約84条の適用規則である。審査部による実体審査に関して規定している。複数の独立クレームを含む出願が発明の単一性に関して問題がないと認められた場合でも、同じカテゴリーについての複数の独立クレームを一つの出願に含んでいる特許出願を制限する方向に、29条(2)が改正されてから、多くの欧州特許出願が同規則の適用を受けるようになっている。

II.1 複数の独立クレームの使用について:一般状況

米国特許と欧州特許では、同じカテゴリーに属する複数の独立クレームを同一特許出願で請求できるかどうかについて相違がある。

米国審査官は、発明の単一性欠如が明らかな場合を除き同じカテゴリーに属する複数の独立クレームを含む出願に対し拒絶見解を出すことはない。

これに対し欧州特許庁審査官は、発明の単一性が確保されている場合でも、同じカテゴリーに属する複数の独立クレームを含む出願審査を好まない傾向にある。

欧州特許庁は、伝統的に、出願に含まれる独立クレームの数が多ければ多いほど審査にかかる時間が増大する、との立場をとってきた。

特にここ数年間、いわゆる米国形式の特許出願を欧州形式に適応させず、そのまま出願する傾向が増えて、状況は悪化していた。欧州特許条約82条及び84条の要求するところを満たさない、従って欧州特許庁にとっては常識を超えているとみなされる、こういった出願は年々増加するばかりであった。

II.2 改正前規則29条(2)

このような場合欧州特許庁は、欧州特許条約84条及び規則29条(2)及び(5)に基づき、明瞭性欠如に基づく拒絶通知を出すのが普通であった。

改正前29条(2)と(5)は次のように定めていた :
(2) 欧州特許条約82条を条件として、欧州特許出願は、単一クレームでは出願の主要事項をカバーすることが適当ではないとき、同じカテゴリー(製品、方法、機器または使用方法)に属する2つ以上の独立クレームを含むことができる、………

(5) クレームの数は特許請求されている発明の性質に照らして妥当なものでなければならない。クレームが2つ以上ある場合には、番号を付すものとする。

改正前29条(2)は、同じカテゴリーに属する複数独立クレームを含む出願を明白に認めていたので、複数独立クレームの存在を理由に出願を拒絶する場合、拒絶の根拠を示す義務は欧州特許庁側にあったのである。

いわゆる“米国形式”の出願増加という情勢に対処することができるように、欧州特許庁は、29条(2)を改正することによって同じカテゴリーの複数独立クレームを含む出願が正当である旨の立証義務を出願人の側に移行した。

以下に説明する新規則29条(2)をみれば、旧規則の内容に比べ同規則解釈の幅が非常に狭いものとなったことがわかる。

II.3 改正規則29条(2)

2002年1月改正の同規則内容は、次の通り:

(2) 82条の規定に関わらず、欧州特許出願は同じカテゴリー(製品、方法、機器、使用方法)に属する2つ以上の独立クレームを含むことができるが、それは出願発明の主要事項が以下のいずれかに相当する場合にのみ限られる :

(a)       相互に関係のある複数の製品であるとき、
(b)       製品あるいは機器の複数の使用方法であるとき
(c)       特別な問題の選択的解決方法、またその解決方法を単一クレームで表現することが、適切ではないとき

従って、改正29条(2)は、発明の単一性の確保されている出願であっても、欧州特許庁に対し、同じカテゴリーに属する2つ以上の独立クレームを含む出願の拒絶を可能にする明確な法的根拠を与えたといえる。

審査官は29条(2)を適用するのに以前のように拒絶理由を長々と述べる必要がなくなった。

II.4 29条(2)適用の実際と我々のコメント

同じカテゴリーに属する独立クレームは1つに限られるとする規則29条(2)のガイドラインは、同じカテゴリーであるにも関わらず複数の独立クレームが可能な例を以下のように挙げている。

(a)       相互関係にある複数の製品:
-          プラグ/ソケット
-          送信機/受信機
-          中間/最終化学製品
-          遺伝子/遺伝子構造/ホスト細胞/たんぱく質/医薬
(b)       製品または機器の複数の使用方法:
-         第二薬効タイプのクレームにおける第二またはそれ以上の医薬の使用方法
(c)       特別な問題の選択的解決:
-         複合医薬品グループ
-         それら複合製品製造のための二つまたはそれ以上の製造方法

出願にあたって同じカテゴリーに属する2つ以上の独立クレームを維持したいと望む出願人は、そのクレームが29条(2)の定める例外(a)から(c)のいずれかに明らかに該当することを積極的に説明し審査官を納得させる必要がある。

29条(2)の改正以来、同じカテゴリーに属するクレームを少なくとも2つ含む場合、審査官から拒絶通知が出されることがほとんどである。我々の経験では、特に機械分野、エレクトロニクス分野の出願にその例が多くみられる。

その場合審査官は出願人に次のように要求する:

-複数の独立クレームでカバーされている発明を単一の独立クレームとして書き直すように。ただし、これは欧州特許条約123条(2)(新規事項の追加禁止)が厳しく適用されることから、いつでも可能なわけではない。
-あるいは、出願を2以上に分割するように。
-あるいは、発明の定義のうち1あるいはそれ以上を放棄するように。

出願明細書をおこすときには特に、発明が解決すべき技術的問題の表現の仕方に注意を払うべきであろう。なぜなら規則29条(2)(c)によれば、特別な問題を選択式に解決するように技術問題が定義されていれば同じカテゴリーに属する複数の独立クレームが許可されることが可能だからである。

2006年6月現在、改正後欧州規則29(2)条に関して欧州特許庁審判部(抗告廷)の下した判例はそう多くない。(同じカテゴリーに属する)一つ以上の独立クレームの使用が正当であることを出願者は証明しなければならない(決定T56/01)とした決定があるのと同時に、2つの独立クレームの使用が出願において維持された判例もある(決定T81/02、T659/03)。特に29(2)(c)で規定されているように同じ問題を本質的に同じ方法で解決するための構造的に異なった2つの手段を2つの独立クレームで請求する場合認められている(決定T525/03、T133/02)。

同じカテゴリーに属する独立クレームが一つ以上あるときには審査が複雑になる(決定T56/01、4.3)が、独立クレームが2つあったからといって発明の保護範囲の当業者による判断の決定的な妨げになるとは限らない、と判例(T81/02、2.4)は述べている。さらには、上記判例のうちひとつは、出願時の2つの独立クレームを一つにまとめて広い独立クレームとして補正すれば、欧州特許条約123(2)条違反となる、(ので2つの独立クレームが認められる)としている(決定T525/03、4.5)。

同じカテゴリーに属する独立クレームが3つ以上存在する出願が規則29(2)条、欧州特許条約84条またはその他の状況に照らして認められるかどうかに関する問題を扱った審判部(抗告廷)の決定は現在のところないように思われる。

©Cabinet Beau de Loménie/October 2002/September 2004/June 2006
翻訳 渡辺恵子



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