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最近の大抗告廷決定 G2/98

G2/98(2001年5月31日)大抗告廷見解*(1) : 先行出願について優先権を主張する場合の要件(欧州特許条約87(1)条)

大抗告廷は優先権についての最も根本的な問題に対する欧州特許庁としての見解を出した:

欧州特許条約87条(1)は次のように定義している :
"パリ条約加盟国のいずれかの国で有効に特許、実用新案、実用証または発明者証を出願した者またはその権利の継承者は、同じ発明を欧州特許として出願するときには、先の出願日から数えて12ヶ月間の優先権を享受する"

同条項は(優先権を享受する)後の欧州特許出願は"同じ発明"に関するものでなければならないとはっきり記載している。

上記の表現は非常に明確であるにも関わらず、抗告部はこれまで"同じ発明"という表現に異なった解釈を与えてきた。

一つ目の解釈は、87条(1)の厳格な解釈であって、欧州特許出願の特許請求の範囲の特徴全てが先の出願で、少なくとも暗示的に、開示されていなければ、"同じ発明"ではないというものである。

二つ目の解釈は、たとえ先の出願で開示されていない技術的特徴が後の欧州特許出願の特許請求の範囲に含まれている場合でも、欧州特許出願で保護が求められている主要事項(subject-matter)は先の出願の優先権を享受できる。というものである。このケースは、特に"発明の機能と効果、故に発明の性格と本質"に関わりのない付加的特徴に関してなされた判断であった。(T73/88)

上記二つ目の解釈によれば、欧州特許出願の請求の範囲が、違う表現ではあるが優先権書類で開示されている"本質"に言及しているならば、質問の対象となっている(発明の本質と関わりのない)特徴が先の出願で開示されていない場合でも、欧州特許出願は優先権を失わない、ということであった。

さらに(欧州特許出願の)技術的特徴が、先の出願でもっと一般的に開示されていた特徴を特別に具現化したものであった場合でも、その特別な技術的特徴が含まれていることが請求された発明の"性格と本質"に変化を及ぼさないならば、欧州特許出願は優先権を失わない、との解釈であった。

長年にわたってこの2つの解釈を巡って論議は深刻になるばかりであった。後の欧州特許出願の特許請求の範囲の主要事項(subject matter)の優先権とは何かについての質問に答えることは、発明の主要事項から見て斟酌しければならない欧州特許出願の先行技術は何かという問題に関してばかりでなく、次の質問にどう答えるかにも影響を与えるからである。

即ち、

- 欧州特許条約54(3)条に照らして、先の出願(複数)が後の欧州出願の先行技術とみなされる日付はいつか?
- 優先権出願には現れていなくて、後の欧州出願に付加されている特徴があって、その特徴が発明の"性格も本質"にも変化を及ぼさないものであると(出願人が主張し、2番目の解釈に従って優先権が認められたとき)、その特徴は、特許付与以降の手続き過程で、例えば異議や無効手続きにおいて、(最終的に翻って発明の)本質をなす特徴である(ので特許は有効であると主張することが可能か)とみなされることが可能かどうか?

バイオテクノロジーのような最先端技術分野では(競争者が同じ課題を研究することが一般におこなわれているので)、先の出願に比べ改良が加えられた発明が次々と出願されることが多く、上記の問題が深刻となっていた。



今回、大抗告廷は、欧州特許条約87条とパリ条約4条を詳細に検討した結果、(同じ発明に関する)唯一の矛盾のない解釈は第一番目の解釈であるという見解を出すに至った。

この解釈によれば、後の欧州特許出願の発明の主要事項(subject matter)が先の出願をもとに優先権を主張できるのは、特許請求された全ての技術的特徴が(少なくとも暗示的に)先の出願で開示されていなければならない。後の出願で保護が求められている発明の主要事項(subject matter)を変化させないと思われる特徴も含め先の出願で開示されていることが必要であるとの解釈である。

大抗告廷はこの結果、((欧州特許条約87(1)条に照らして、"同じ発明"であるとして(後の欧州特許出願に際し)優先権を主張する為の要件とは、即ち欧州特許条約88条に基づいてなされた欧州特許出願の特許請求の範囲の優先権が認められるかどうかは、当業者が、先の出願全体を見ただけで、直接に迷うことなく、当業者の持つ一般知識だけで、特許請求の主要事項(subject matter)を、実現できることを意味する))との判断を出した。

*(1)欧州特許条約112(1)(b):同じ種類の問題をめぐり、2つの異なる公告廷判断がなされたと時には、欧州特許庁長官は、欧州特許庁としての統一見解を出すよう大抗告廷に要求できる。

Pascal MOUTARD © Cabinet Beau de Lomenie/2001年10月
翻訳 渡辺恵子



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