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フランス特許取得までの手続き

フランス特許の取得

フランスにおいて有効な特許を取得するには、フランス国内特許として出願する方法と、欧州特許出願あるいはPCT出願においてフランスを指定する方法がある。

但しフランスはPCT条約第45条(a)の取り決めを採用しているので、PCT出願においてフランスを指定しても直接フランス国内に移行することは不可能で、広域特許である欧州特許にまず出願を移行する必要がある。(フランスと同様にPCT-欧州特許ルートを採用している国はイタリア、ベルギー、キプロス、ギリシャ、アイルランド、モナコ及びオランダである)これに対しドイツや英国はPCT第45条(a)を採用しなかったのでPCT出願から直接国内特許出願として移行が可能。

本文はフランス国内特許出願についてのみ説明する。

 

出願

フランス特許出願は必ずフランス語で行う。ただし米国とフランスの間に存在するような2カ国間合意があるときには外国語での出願も可能。発明者は必ず指名しなければならない。優先権証明書を提出する必要があるが、優先権書類の翻訳は必要ではない(表紙だけは翻訳の必要がある)。フランスの代理人を通して出願するときには委任状は必要ではない。

 

方式審査

方式審査は予備サーチレポート作成手続きに入る前にフランス特許庁(INPI=フランス工業所有権庁と呼ばれる)で行われる。

出願明細書一式に漏れがないかが審査されるほかに、出願発明は特許を受けることのできる発明であるか、出願は一つの発明のみを取り扱っているか(発明の単一性)が審査される。

特許を受けることのできる発明かどうか(特許要件)についてのフランス特許法取り決めは欧州特許条約が定めているものと全く同一である。特にコンピュータプログラムそのもの、ビジネスモデルは特許になり得ない。

 

発明の単一性に関するフランス特許法の規則も欧州特許条約と全く同一で、発明の単一性を出願が確保するにはクレームの全てが一つの共通した概念で繋がっている必要がある。

同じ出願内にたとえば製品、製品を得るためのプロセス、及び製品の使用、についてのそれぞれの独立クレームを含むことができる。この場合の共通の概念とは製品が持つ独自の特徴に具現されているからである。

また一定の範囲内ならばたとえば製品に関する独立クレームを複数含む出願も認められる。

それらクレームが製品の特徴を現わしていて組み合わされたとき先行技術を超える特徴の組み合わせとして具現されるならば発明の単一性がある、と認識されるからである。

が、2007年3月1日に施行された政令2007-280によってフランスは欧州特許条約実施規則29(2)条と全く同じ規則を採用した。従って今後は同じカテゴリーの独立クレームを複数含む出願に対しては制限が厳しくなることが予想されている。

特にフランスの審査官は米国特許出願に見られるような同じカテゴリーの独立クレームが多数存在する特許出願は許容しないので注意が必要である。この場合審査官は、出願人に対し、発明の単一性の維持のためにはそれらを主クレームとそれに繋がる従属クレームを複数含むクレームとして書き直すように要求する。

発明の単一性欠如に基づく通知を受けたときには出願人はそのうちの一つの発明を選択し残りは放棄するか、どちらの発明も確保したいときには同時に分割発明を出願することができる。一つだけの発明を選んだ場合でも出願人はその出願が特許庁に係留中(特許料金を支払うまで)ならば残りの発明を後になってから分割出願することが可能である。

発明の単一性欠如に基づく拒絶通知は、予備サーチレポート作成を下請け機関である欧州特許庁にフランス特許庁が要請する前か予備サーチレポート発行と同時になされる。後者の場合サーチは(欧州特許庁で)一つ目にクレームされた発明についてのみなされる。このため複数の発明を含むと判断される危険のある出願を行う際には出願人にとってより重要な発明を第一クレームとして出願することが大切である。

 

予備サーチレポート請求手続き

予備サーチレポート請求は、出願と同時か出願日あるいは優先日から18ヶ月以内にサーチ費用を納めることによって行われる。ただし18ヶ月の期限が過ぎても超過料金を支払えば請求は可能。(フランス特許庁が送付する、予備サーチレポートを請求するのかどうかについての最終質問状から2ヶ月以内なら超過料金支払い付きで請求できる)定められた期限内に予備サーチレポート費用を支払わない場合、出願は自動的に実用証願いに切り替わる。実用証の存続期間は6年で、付与要件は特許と全く同じながら実体審査なしで交付される。

フランス特許の予備サーチレポートはフランス特許庁のサーチ下請け機関としての欧州特許庁が行う。

欧州特許庁のサーチレポートと全く同じ体裁をなしたサーチレポートをフランスでは予備サーチレポート、と呼んでいる。2005年7月1日の出願からは欧州特許庁で拡大サーチレポート(審査官の意見つきサーチレポート:EESR)が発行されているが、フランスではこれを予備サーチレポートと呼んでいる。従って2005年7月1日以降出願のフランス特許出願に対する予備サーチレポートには欧州特許庁審査官の調査結果と意見が示されている。審査官意見書は出願とともに公開はされないがファイルラッパーの一部を形成するので公開日以降は第三者が閲覧することが可能である。

出願が優先権を主張していないとき、予備サーチレポートは原則として出願日から9ヶ月以内に出願人に送付される。従って出願人(主にフランス人)は、その出願をもとに優先権を主張して外国に出願するときには既に欧州特許庁から発行された予備サーチレポートを入手していることになる。

一方優先権を伴った(主に外国からの)出願の場合は、予備サーチレポートはしばしば公開日より後に作成(1年、ときによっては数年後)される。従って出願公開と予備サーチレポートの公開は一緒に行われない場合が多い。

出願公開

全てのフランス出願公開は出願日あるいは優先日から数えて18ヶ月目に予備サーチレポート公開と同時か別々に行われる。

予備サーチレポート(欧州特許庁のEESRと同じ体裁のサーチレポート)への回答

予備サーチレポートにA以外の先行技術の記載があるとき、出願人はサーチレポート受領後3ヶ月以内(申請すれば更に3ヶ月延長できる)に回答する義務がある。3ヶ月+3ヶ月の期間後フランス特許庁から回答を要求する督促状が送られて来る。督促状に定められた期限を過ぎてなお回答をしない場合、特許庁は最終拒絶通知を出す。

外国からの出願人はしばしばこのフランスのシステムと欧州特許庁のシステムを混同して、予備サーチレポートに回答せず審査官からのオフィスアクションを待つ、とフランスの代理人に返事をすることがよくある。フランスにおいては予備サーチレポート(EESRの形式のもの)受領は即ち審査官からのオフィスアクションである、と考える必要がある。A以外の記載のある予備サーチレポートには回答の義務があることを繰り返し喚起する。

フランス特許庁は新規性欠如をもとに出願を拒絶する権利を持つが進歩性欠如を根拠として出願を拒絶する権利を持たない。

たとえばAの記載しかない、特許査定になることがはっきりしている出願の場合でも、この機会にクレームを補正することができる。補正は次のようなときに必要である :

-新規性を確保するため、

-特許交付後裁判所において進歩性がチャレンジされたときに備えて新規性と進歩性を備えたクレームを少なくとも一つは残すために、

-欧州特許庁審査官の意見書である意見書つき予備サーチレポートには新規性/進歩性欠如のみならず明瞭性についての意見が付されていることもあるので、予備サーチレポート受領後フランス特許庁に回答するときには、この点も克服するほうがよい。

 

フランス特許出願においては、予備サーチレポートに回答するときが事実上最初で最後のクレーム補正の機会であると考えるのが適切である。 

欧州特許庁のプラクティスとは異なり、フランス特許庁は、補正について出願時明細書(発明の詳細な説明部分)に支持部分があることを条件として柔軟な態度で臨むことが多い。が、図面を補正支持部分として主張することは許容しない。

もちろん新規事項の追加は許されない。明らかなエラー(脱字/ミスタイプ)のみ特許交付時まで補正が可能である。クレームの自主補正は欧州特許庁がサーチを開始するまでか上記で説明した予備サーチレポート受領後の期間に限ってのみ可能である。特許交付後のクレーム補正は認められていない。

フランス特許システムの長所は、予備サーチレポートに指摘された先行技術及び出願人自らが知っている先行技術に照らして自分の責任においてまた主体的にクレーム補正を行える点にある。明細書支持の正当性など、補正の理由を長々述べる必要もない。逆に将来に備えてクレームを限定解釈してしまうことになる説明はなるべく避けるようにするべきである。

2007年3月1日付けの上記政令によりフランス特許庁は、出願人に対して他国における並行出願で明らかになった先行技術を開示するよう要求できるようになったが、この政令の取り決めがフランス特許庁審査官によってどのように運営されるかについてコメントをするには時期尚早であると思慮される。

 

実体審査と(最終)サーチレポート作成

実体審査は予備サーチレポート(EESRと同じもの)に指摘された先行技術を基にして行われる。この際第三者が意見を提出できる。第三者意見に対して出願人はフランス特許庁に返答する。

実体審査の第一段階はクレームの全てに新規性があるかどうかについて行われる。出願人の回答(補正)にも拘らず新規性に欠けると審査官が判断したときには拒絶通知が出される。出願人はこれに回答しなければならない。非常に稀ではあるが新規性欠如を根拠にした審査官拒絶が最終決定となった場合、出願人はこれを不服としてパリ控訴院に訴えることができる。

予備サーチレポートに対する出願人からの回答及び/またはクレーム補正によって新規性が確保された、とみなされると、審査官は特許交付のため最終サーチレポートを準備する。

進歩性の判断についてのフランス特許庁審査基準も欧州特許庁の審査基準と全く同じものが使用されているが、審査官はその判断をもとに拒絶通知を出すことはできない。予備サーチレポートに回答して提出された補正にもかかわらず、最終サーチレポートに進歩性を脅かす先行技術が存在する、と審査官が判断した場合にはその先行技術を最終サーチレポートに記載することができる。

換言すると、最終サーチレポートに、クレームに相当して先行技術の記載があるときには、それらのクレームに関しては裁判所で有効性が問われる可能性があることを審査官が示していることになる。

交付された特許の有効性を判断できるのはフランスでは裁判官のみである。裁判官は、フランス特許法が規定している進歩性欠如を含む特許要件に照らして特許の一部または全部が有効かどうか判断する権限を持つ。裁判官は、その判断にあたって審査官の示した最終サーチレポートの記載に縛られることはない。

 

交付

審査官が最終サーチレポートを作成し終えると、出願人に特許交付料金と印刷料金を支払うよう要求する。

特許は最終サーチレポートとともに公開される。従って第三者は審査官がどの先行技術が進歩性を脅かす可能性がある、と考えているのか知ることができる。(1990年のフランス特許法改正までこの最終サーチレポートは審査官意見書と呼ばれていた)

フランスには異議制度はない。この点も、出願人が比較的自由にまた主体的にクレーム補正を行えることと合わせてフランス特許制度の特色と言うことができる。

 

特許の無効化(無効裁判) 

特許無効は侵害訴訟において無効の抗弁として請求されることが多い。無効裁判自体を起こすことももちろん可能である。実際には無効裁判の数は非常に少ない。理由は裁判に非常に時間がかかる上に特許の完全な無効を勝ち取ることは容易でないからである。侵害裁判における被告の立場に立って裁判中に特許無効の抗弁を請求するほうが、無効裁判の原告の立場に立つよりも、特許の部分的無効を得る、またはクレームの範囲限定を勝ち取って結果的に侵害を回避できる点で利点が多いからである。(注:侵害訴訟において無効の抗弁を行うときは、原告が侵害を主張しているクレームについてのみ無効主張ができる)

 

あとがき

多くの人がいまだにフランスでは審査なしで特許が交付される、と信じている。実際1968年より以前はフランス特許出願は方式審査のみで特許付与がなされていた。しかし1968年1月2日の特許法改正によってフランスは出願人に先行技術に関する(予備)サーチレポートの請求を義務付けるようになった。

既述したように、(予備)サーチレポートに新規性、進歩性を脅かす先行技術が記載されていた場合、出願人は何らかの回答(クレーム補正及びまたは意見書)をしなければならない。このようにしてフランスは完全審査主義と無審査主義の中間方式を採用したのである。この方式は、出願人が先行技術を克服すべく補正を行う際に出願人の補正に関する自由と主体性を保証する優れた方式である、と言える。

2007年3月1日付けの政令によりフランス特許法は発明の単一性の判断基準について欧州特許庁と全く同じ基準を備えることになった。また2005年7月1日以降の出願には欧州特許庁発行の審査官意見書つきEESRがフランスの予備サーチレポートとして出願人に発送されるようにもなった。この結果、新規性/進歩性/明瞭性/発明の単一性、の認定について欧州特許とフランス特許は全く同じ審査基準を持つことが法的に明確にされた。

が、既述のようにフランス特許庁の審査官は進歩性欠如を理由として出願を拒絶できないので、出願人は発明の単一性を理由とした拒絶通知に対して、新規性のみを確保した広いクレームをメインクレームとして従属クレームにおいて進歩性を考慮した詳細な特徴を提示することが許される。このようなクレームの書き方は欧州特許庁では不可能で分割出願が避けられない、など実際のクレームの書き方について有利な点を指摘することができる。

欧州特許庁が発行する質の高いサーチレポートを入手できること、欧州特許庁より諸料金が安いこと、交付までの期間が比較的短いこと、異議制度が存在しないこと、を考慮するとフランス特許システムには多くの正当な長所を見つけることができる。

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予備サーチレポート :Rapport de Recherche Préliminaire
(最終)サーチレポート:Rapport de Recherche

©Cabinet Beau de Loménie/May 2007



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