| 欧州特許条約改正 |
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目次
1. 特許を受けることのできる発明
2. 新規性に関する基準 3.
欧州特許条約69条の解釈についての付随合意書
4. 大抗告局
5. 保護範囲を制限する補正手続き
6. 出願日の認定最低要件
7. 欧州特許各事務局の地理的記載の廃止
8. 欧州特許庁委員会(AdministrativeCouncil)の権限
9. 優先権
10. 審査手続きと異議手続き
11. 追加手続きと権利の回復について
12. 出願に関する情報提供
13. 職業代理人
14. 特別合意
欧州特許条約改正についての外交官会議は予定通り2000年11月20日から29日までミュンヘンで開催された。
本会議で採択された改正条約案の内容は非常に広範囲にわたっている。最終的にこの膨大な改正案のうち次に述べる2点を除きほぼ全部が承認された訳である。
改正にならなかった重要点のうちの一つは、特許を受けることのできない発明からコンピュータープログラムそのものを削除するという提案、もう一つは現行条約69条の解釈に関する付随合意書を変更して、均等の定義と出願書類(包袋)禁反言の法則を導入するという提案であった。
また今回条約改正の目的の一つは、TRIPSおよび2000年6月2日にジュネーブで採択されたPLT(特許法条約)の内容と欧州特許条約の内容を整合させることにあった。
今一つの目的は、欧州特許庁委員会(AdministrativeCouncil)が変更権限を持っている条約施行規則に現行条約内容を移転するところにあった。
今回採択された改正条約が発効するのは、条約全加盟国のうち15カ国において批准手続きが終了してから2年後、あるいは全加盟国が批准し、批准書を提出してから3ヶ月後のいずれか早い方となっている。即ち、改正新条約の発効は今から約4年後になると予想される。
1. 特許を受けることのできる発明
現行条約52条(2C)に記載されている特許を受けることのできない発明のリストの変更、即ち同リストから少なくともコンピュータープログラムを削除することが提案されていたにも関わらず、この改正案は承認されなかった。これは大方の失望を買った。
これは、"オープンソース"を支持するグループが、"コンピュータープログラムに特許性を認めた場合の市場経済に与えるインパクトについて現在欧州委員会が研究中である"ことを理由に改正阻止の圧力をかけた為である。よって、欧州委員会の研究結果が出るまではコンピュータープログラム自体を、特許を受けられない発明のリストから削除するかどうかの決定は得られないことが予想される。本件改正については、次回2001年の外交官会議でもう一度検討されるものと思われる。
2. 新規性に関する基準
1) 現行条約54条(3)と54条(4)は二重特許を排除することを目的としている。
今回54条(4)の削除が承認されたので、54条(3)にあてはまる欧州特許出願は、欧州特許条約加盟国全部において先行技術であるとみなされることとなる。(よって、現行条約実施規則、23条(a)は削除される)
2) 更に現行条約54条は、化学物質あるいは化合物の第2あるいは第3、第4の治療的使用に対しても特許保護が可能となるよう改正されることが決まった。
3. 欧州特許条約69条の解釈についての付随合意書
条約69条の解釈に関わる付随合意書(特許発明の保護の範囲について定義している)を変更し、均等の定義と、発明の保護範囲を曖昧に制限するような内容の、出願手続き中のいかなる出願者による宣言も、保護範囲の限定とみなされる(出願書類(包袋)禁反言)との原則を盛り込むことが提案されていた。
この問題は改正案提案以前また外交官会議中も盛んに討論されたが、結局、発明の保護範囲の正確な限定にあたっては"請求項に特に記載されている要素の均等物に相当する要素には当然の注意が払われるべきである"と変更することのみが決定された。
4.大抗告局
1) 新条項11条(5)によって、大抗告局における審査に欧州条約加盟国の外部判事(加盟各国判事)が参加できる法律的根拠を与えることが決定された。
2) 大抗告局は抗告局の決定を不服とする再審願いの受理決定についての責任を負う(欧州条約22条、112条(a))。不服再審願いは、抗告局審理に"基本的な"手続き上の瑕疵があったか、抗告局決定に影響を与える刑事上の行為があったと認められる場合のみ大抗告局によって受理される。また、大抗告局審理中であっても、抗告局の決定履行が停止されることはない。
5. 保護範囲を制限する補正手続き
新条約105条の(a)から(c)によって、付与後の欧州特許の特許請求範囲の制限や取り消しを欧州特許庁に一括して出願できることとなる。同改正規則の詳細は条約施行規則に記載されることとなる。
これによって、特許所有者のみの自発的願い出により、特許の保護範囲を制限したり、取り消したりすることが可能となる。同請求は、付与後その特許が異議審査中でなければ、存続期間中いつでも請求できる。
6. 出願日の認定最低要件
出願日認定の為の最低要件に関するPLT(特許法条約)の規定内容と整合させる為、欧州特許条約第14条が改正される。それによると、出願は、欧州特許条約の公式言語のいずれか一カ国語でなされるか、あるいは(日本語を含む)他の言語でなされた場合は、公式言語のうちいずれか1つの言語に翻訳されなければならないとされる。
従って、改正条約発効後は、いかなる言語による出願も可能になる。
また出願日認定要件(現行条約80条)に関する取り決めはPLT(特許法条約)5条と整合され、実施規則に移される。
7. 欧州特許各事務局の地理的記載の廃止
ミュンヘン、ハーグ、ベルリン各地にある欧州特許庁各事務所を全体として最良の形で運営していく為、現行条約16条17条を変更し、出願受理セクションと調査部をハーグの欧州特許事務所にて行うという地理的記載を取り消すことが決定された。
8. 欧州特許庁委員会(AdministrativeCouncil)の権限
欧州特許条約と他の国際条約及び特許に関する欧州共同体法令とが常に整合した状態にあることを保障するため、欧州特許条約のうち特許法と施行法を変更できる権限を欧州特許庁委員会に与えるべく現行条約33条と35条が変更された。
9. 優先権
条約87条(1)はTRIPS第2条と整合し、最初の出願をWTO(世界貿易機構)加盟国のうちの1つで行った出願も優先権を確保すると変更された。
また、条約88条(1)にある優先権主張の為に必要な手続きに関する取り決めは実施規則の方に移される。原則的にはその内容がPLT及びPCTの規則と整合するよう改正されるはずである。
10. 審査手続きと異議手続き
現行条約90条から97条、99条から110条、115条、117条、また119条から122条の各条項に定められている諸条件は実施規則に移される。この中には審査請求の時期的制限や失った特許権の回復に関する取り決めが含まれている。
一方、外交官会議において、数人の代表者から異議申立て期間を短くするべきだとの意見が出たにも関わらず、その期間を9ヶ月としている現行条約99条はこのまま維持されることが決まった。
11. 追加手続きと権利の回復について
欧州特許条約121条は変更され、(一旦出願却下とみなされた出願手続きの)追加手続きの可能性の範囲が広げられ、また欧州特許付与手続きの各種期限に間に合わなかった時の法的救済基準が加えられた。
122条も同じく変更され、追加手続きの可能性の範囲が広げられた。
12. 出願に関する情報提供
欧州特許条約124条(1)は変更され、出願人が同じ内容の特許を別の国、あるいは別の広域特許庁に出願している場合、その出願内容を現行条約が要求している以上に詳しく提供するよう、出願人に対し、欧州特許庁から要請できることとなった。
13. 職業代理人
新条項134条(a)によって、欧州特許庁で手続きを行う職業代理人の法的特権を導入する権限を欧州特許委員会(AdministrativeCouncil)に与えることとなった。この結果、例えば米国における並行特許に関し侵害訴訟がおきた場合、欧州職業代理人と顧客間の通信内容は極秘文書として扱われ開示不可能となることが期待される。
14. 特別合意
新条項149条(a)が導入された結果、翻訳義務や欧州特許侵害紛争について、欧州特許条約加盟国間の将来の合意に備えた明確な法的基礎が確定した。
© CabinetBeau de Lomenie/2000年12月
翻訳 渡辺恵子
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