共同体意匠欧州規則発令
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欧州共同体委員会による1994年1月31日付け第一回共同体意匠制度創設提案から7年の歳月を経た2001年12月12日、欧州連合は共同体意匠に関する欧州連合規則(Council Regulation)を発令した。
共同体意匠制度の最も注目されるべき点は、以下に述べる2種類の意匠権が創設されたところにある。デザインに関わる欧州での知的所有権保護には、従来の著作権、国別の意匠権登録、国際登録、商標権の利用に加えて今後は次の可能性を考慮することが必要となる。
即ち、
-2003年1月から規則適用が予定されている登録共同体意匠
-2002年3月6日から既に適用となっている非登録共同体意匠
1 意匠権の発生と意匠権保護を享受するための要件
共同体意匠の権利は意匠の創作者あるいは権利継承者に属する。そのうち登録共同体意匠の権利は、スペイン(アリカンテ)の共同体商標意匠庁(OHIM=欧州連合市場調和機関)へ登録出願した日に発生する。
一方、非登録共同体意匠の権利は、共同体域内(欧州連合加盟国内)において、広告や、展示会、商品の販売などの形で公衆に意匠を開示した日に発生する。この場合の開示とは、意匠が対象としている産業部門の専門家が欧州連合域内においてごくあたりまえに意匠のことを知った段階のことをいう。
意匠が保護を享受するための要件は登録意匠、非登録意匠とも同じである。
即ち、
-
保護の対象は、商品あるいは商品の一部の外観である。整備や修理の状態を除いた正常の使用状態において外から見ることのできない部品などは意匠保護の対象にならない。
-
共同体意匠は新規でなければならない。非登録意匠に関しては、その意匠が公衆に初めて開示された日において、また登録意匠については意匠出願がなされた日、または優先日において絶対的に新規であることを必要とする。
-
共同体意匠は、"独自の性格"を持つものでなければならない。意匠は、眼識のある使用者から見て、既に存在している意匠とは異なる印象を与えなければならない。この条件を意匠が満たしているかどうかの判断にあたっては、意匠創作者がどの程度自由に創作できるかが(デザインの対象となるものの用途などから自由度がある程度制限されることもあるため)考慮される。
-
意匠保護の要件に美観度は要求されていないが、商品が機能するのに必然的にその外観でなければならないものに意匠権は与えられない。但し例外として取り付け、取り外しが可能なモジュール製品の結合部品には意匠権が与えられる。
-
公序良俗に反する意匠に保護は与えられない。
2. 意匠保護の範囲
保護の範囲は登録共同体意匠、非共同体登録意匠によって異なる。共同体意匠規則制定の目的の一つは経済的寿命の短い商品を多数創作する企業にも、出願という手続きを踏む必要のない非登録意匠を制定することで、登録意匠より保護期間の短い意匠権保護を享受できるようにするところにある。
-
保護の地理的範囲 : 登録共同体意匠、非登録共同体意匠とも欧州連合全域
-
保護期間 : 登録共同体意匠は5年間。更に5年ごとに4回まで更新が可能。よって出願の日から数えて最長で25年間が存続期間となる。非登録共同体意匠は本文1に述べる開示の日から数えて3年間。
-
保護の効果 :登録共同体意匠は、登録意匠そのものあるいは類似意匠を意匠権者の同意なく第三者が使用する(使用の行為には意匠の製造、製造の申し出、販売、輸入、輸出、などが含まれる)ことを禁ずることができる。非登録共同体商標はこれに対し、第三者が意匠のコピーをすることを禁止できるのみである。但し、共同体意匠に関しては欧州連合域内での消尽が適用されるので、意匠権者が欧州連合の一国で商品を市場に自ら置いた、または置くことを第三者に認めた場合には、その意匠が欧州連合内に自由に流通することを妨げることはできない。
3. 共同体意匠出願手続き
非登録共同体意匠は出願の必要がない。とは言え、3年間という存続期間主張の根拠となる開示事実及び開示の日付を証拠立てできるものを意匠の所有権を証明できる証拠とともに確保することが不可欠である。
登録意匠はアリカンテのOHIMに登録出願の必要がある。登録は方式審査のみであって、先行意匠に関する審査(新規性及び独自の性格についての実体審査)はない。出願の際に登録費用と場合によっては意匠登録公告の遅延願い*(1)を一緒に届け出る。
- 出願できるのは誰か?
国籍に関わらず、全ての自然人及び法人。欧州連合非居住者(または営業所を持たない法人)は出願手続きを除く他の全ての手続きにおいて代理人の選定が義務付けられている。出願人は全ての手続きにおいて、意匠権者であるとみなされる。但し意匠の創作者が出願人と異なる場合には、創作者としての氏名を出願書に記載することができる。
- いつ出願すべきか?
優先権を主張するときは、パリ条約加盟国加盟国あるいはWTO(世界貿易機関)加盟国においてなされた国内意匠出願日から数えて6ヶ月以内(優先権期間)に。
そして/あるいは、意匠を自ら開示した場合は1年以内(新規性喪失の例外、第三者の背信による開示にも例外が適用される)に。共同体意匠に関する限り、1年間の期間が経過して出願のない意匠は非登録共同体意匠の権利のみを享受することになる。
- 出願に必要なものは?
出願意匠の図面あるいは写真を提出する。立体の雛型を提出してもよい。どういう製品(商品)に意匠が適用されるのかも記載しなければならない。また複数の意匠を1つの出願に含ませることが可能*(2)であるが、この場合はロカルノ協定国際分類表の同一分類に全ての意匠が属する場合のみに限られる。
- 出願言語
欧州連合公用11カ国語のいずれかで行う。また出願以降の手続きについての言語を共同体商標意匠庁の公用5カ国語(英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語)の中から出願時に選択する必要がある。
- 出願費用
料金に関わる規則が公示されていないので現時点では不明。
4. 共同体意匠を巡る紛争
共同体意匠に関する紛争は共同体意匠裁判所と呼ばれる特別裁判所(複数)で一審と控訴審が扱われることになる。欧州連合加盟各国は、2005年3月6日までに自国内のどの裁判所が共同体意匠裁判所となるのかを指定しなければならない。
共同体意匠裁判所は、共同体意匠(登録/非登録)の侵害訴訟、侵害訴訟に対抗して無効を主張する(登録/非登録意匠の)無効の抗弁、非登録共同体意匠の無効訴訟、に関して管轄権を持つことになる。
共同体意匠裁判所は、本欧州規則が定める裁判所管轄規定により、欧州連合でおきた侵害事件について管轄権を持つ。侵害の範囲が例えば欧州連合全域に及ぶ場合も同様である。
訴訟の共同体意匠裁判所管轄は、被告の居住地あるいは本社所在地、さもなければ、原告の居住地あるいは本社所在地、さもなければスペインの共同体意匠裁判所、あるいは侵害の行われた場所の裁判所、というように既に存在するEU連合規則に従って決定される。加盟各国の国内法が定めている仮執行(急速審理)なども、共同体意匠侵害に際して請求できる。
登録共同体意匠の無効主張についてはOHIMに管轄権がある。
5. 所有権としての共同体意匠
(登録/非登録意匠)共同体意匠権は、欧州連合全域で均一に有効であるので、欧州連合の一部の国だけを対象に意匠権の譲渡を行うことはできない。意匠権使用契約(ライセンス契約)については欧州連合加盟国の一部にのみ適用することができる。
登録共同体意匠は質権、物権、あるいは強制執行の対象となる。
登録共同体意匠に関する契約書類は共同体商標登録簿に登録しなければ第三者対抗の効力を持たない。
6. 取り替え部品に関わる意匠
取り替え部品とは複合製品の部品のことで、製品を元々の外観に復元するため修理の際に取り替えられる部品のことをいう。例としてよく使われるのが自動車のバンパー、ミラーなど外から見える部品である。この分類については欧州連合各国の経済的事情によって意匠保護を与えたり、与えなかったり国内法の違いがはなはだしく、共同体意匠での取り扱いに関していまだ意見の統一に至っていない。従って共同体意匠はこの分類に関しては今のところ登録を取り扱わない。2004年にEU委員会による新たな提案が予定されている。
7. 最後に
共同体意匠は、既に存在する加盟各国国内意匠制度、国際意匠制度、著作権などに加え、欧州での意匠保護の可能性を新しく提供するものであって、既存のシステムにとってかわるものではない。
とは言え、簡単な登録手続きを一箇所で行うだけで欧州連合全域において均一の保護が可能となる共同体意匠が有利な制度として定着することは確実であろう。
複数ある可能性の中から欧州でどのように自らの意匠を保護するかの選択について、欧州代理人の助言が重要となると予想される。特に出願せずに意匠を開示した場合、共同体意匠については、非登録意匠によってのみの保護しか得られない、また国別意匠としては登録が不可能になる危険があることを認識すべきであろう。
* (1) 意匠登録公告遅延願い : 出願時に意匠登録公開を出願日あるいは優先日から30ヶ月遅延することを願い出ることができる。
* (2) 複数意匠出願 : 特に商品寿命の短い産業部門に配慮。出願複数意匠の一つずつが独立した意匠として権利を確保する(例えば複数意匠のうち一つだけを最終的に市場に置くことやライセンス契約を結ぶことを決めることができる)。
© Cabinet Beau de Lomenie/April 2002 Aurelia Marie
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