| 欧州共同体法における複合製品修理のための取替え部品の保護 |
|
 |
I. 歴史的背
意匠保護に関するEU各国の法律調和を目的として欧州委員会は1991年グリーンペーパーを発行した。それには達成すべき目標として次の3点が挙げられていた。
- 加盟国間法規定調和のための欧州指令の準備
- 共同体意匠の創設
- 著作権と意匠権による二重保護
意匠保護に関する欧州指令98/71が採択されたのは、7年後の1998年であった。特に、自動車取替え部品の意匠による保護、について各国の合意がならず、欧州指令発令の障害として横たわっていたからである。自動車業界は取替え部品について従来どおりの保護を求め、一方部品製造業界や流通業界は取替え部品の意匠による廃止を求めていた。最終的には、取替え部品に関する問題をいったん棚上げにしたまま意匠保護に関する加盟国間法規定調和を目的とする同欧州指令が発令されることとなった。
同欧州指令14条は、経過措置として、自動車等の複合製品の外観を修復するための取替え部品に関する意匠保護については、EU加盟各国の国別現行法を維持すること、を取り決めている。また、欧州指令施行4年後、即ち2005年にはこの措置に関して欧州委員会による新たな提案が可能であるとしている。
この妥協によって欧州指令98/71は施行され、EU加盟各国の意匠保護法の調和が実現し、さらには2001年12月EU域内において等しく有効な共同体意匠に関する欧州規則が発令され共同体意匠制度が発足した。
II. 上記欧州指令と共同体意匠に関する欧州規則は、複合製品の部品に関して異なる保護内容を規定していること、に注意する必要がある。
1998年の欧州指令98/71第1条と共同体意匠欧州規則第3条は、複合製品を“複数の部品からなる製品で部品の取替えのため製品を分解し再び復元することが可能な製品”と定義している。
このような複合製品の部品は、欧州指令98/71によれば、EU加盟国それぞれの国内法によって保護が可能である。ただし意匠が新規であること、独自の性格を持つこと、正常の使用において外部から見える物であること、商品が機能するのに必然的にその外観でなければならないものではないこと、である必要がある。
上記欧州指令は2001年10月28日までにEU加盟各国が指令の規定に沿うよう自国の意匠法を必要ならば改正するよう定めていた。例えばフランスは2001年7月25日付け政令によって知的所有権法の意匠に関する規定を改正した。この改正によってもフランスは自動車等の取替え部品(外部からみえるもののみ)の意匠保護を存続させている。
EU加盟国のうち複合製品の修理のための取り替え部品の意匠による保護を認めず自由流通を実現しているのは、ベルギー、ハンガリー、アイルランド、イタリア、リチュニア、リュクセンブルグ、オランダ、スペイン、英国の9カ国のみで、その他の加盟国国内法は外部から見える自動車の修理のための取替え部品に対する意匠保護を現在のところ認めている。
一方共同体意匠に関する欧州規則は、複合製品取替え部品の共同体意匠による保護を認めていないのである。
同欧州規則前提事由13は、次のように述べている 。« 複合製品の外観を構成する組み立て部品であって、複合製品の外観を初期の外観に修復するために用いられる取替え部品に対しては、欧州委員会による新しい指令提案があるまでは共同体意匠保護は与えられない »
欧州規則第110条は次のように定めている:
経過措置
1. 本件に対して新たな欧州委員会提案がなされ、本欧州規則変更が施行される日までは、複合製品の外観を初期の外観に修復するために使用される取替え部品の保護は、本欧州規則19条パラグラフ1の意味においての使用に関して、存在しないものとする。
2. 本経過措置に言う欧州委員会提案は、欧州指令98/71/CEの第18条に定める欧州委員会による同じ主題に関する指令変更と同時になされるべきものであり、指令変更の内容に沿ったものとなるはずである。
上記によれば、共同体法は、“正常の使用において外部から見えるものに対しては、新規で、独自の性格を持ち、商品が機能するのに必然的にその形状である必要があるものでない限り、複合製品を構成する部品(ミラーのように自動車にメーカーによって製造時に取り付けられる取替え可能な部品)は共同体意匠による保護が可能である。ただし製造時(取替え可能な)部品が、複合製品(自動車)を初期の外観に修復するため別の部品によって取り替えられたときには、その別の取り替えられた部品に対して製造時部品の意匠権を行使することはできない”と規定していることになる。
III. EC条約81(3)*適用にあたっての自動車産業部門の垂直合意 (例えばメーカーと系列修理会社との合意)及び合議に関する2002年7月31日付け欧州規定1400/2002
(*EU条約81条はEU圏内における商品の自由な流通を制限する合意、契約は禁止される、としているが、81条(3)で免除規定を設けて一定の合意を自由流通を妨げないものとして認めている。)
この規則は、自動車産業部門の垂直合意のうち商品の自由流通を妨げるものではないとして81(3)適用になる(免除になる)ものとならないものとに区別し、修理サービス及びメンテナンスサービス部門の競争を保障することを目的として設けられたものである。
この規定を読めば、欧州委員会が、部品メーカーが自動車メーカーによって部品の販売先を制限される、ことには明確に反対の立場を取っていることが明らかに理解できる。
同規定4条1は81(3)にいうところの合意にはあたらないので免除規定に相当しない、として、例えば(j)(k)のような制限を合意によって行ってはならない、としている。
(j) 取替え可能な元もとの部品(オリジナルパーツ)、それと同等の品質の取替え部品(スペアパーツ オブ マッチング クアリテイ)、整備、診断、あるいはその他の設備のサプライヤーと自動車メーカーの間の合意で、サプライヤーがそれら商品やサービスをメーカー系列流通業者、自由流通業者、または系列修理業者、自由修理業者、または最終消費者に自由に供給することを制限する内容のもの
(k) 新車メーカーが保障期間中の無料修理、あるいはリコールによる修理の際には修理業者にオリジナルスペアパーツを使用するよう要請する資格があるかどうかには関わりなく、メーカーが販売会社や系列修理業者にメーカー以外から自由にオリジナルスペアパーツや同等の品質のスペアパーツを入手することを制限すること、
例えば、自動車メーカーが部品メーカーに対し、後者が開発した知的所有権やノウハウを譲渡することを強制する条項を含んだ合意は、部品メーカーが自動車メーカー系列修理業者や独立修理業者に取替え部品を販売させないことを狙っている、として欧州規定1400/2002の免除規定から除外される。
この欧州規定はまた、自動車取替え部品の定義を明らかにしたことで特筆に価する。
即ち 第1条定義の部分で、 取替え部品(スペアパーツ)を « 自動車内あるいは自動車上に備えられる、自動車を使用するため必要な例えば潤滑油のようなものも含む全ての品物のことを指す。ただしガソリンは除く »としている。また、取替え可能な元もとの部品(オリジナルスペアパーツ)の定義を、 « 自動車組み立て時に取り付けられる取替え部品であって、自動車メーカーの生産標準とスペックに従って製造されたもの »、同等の品質の取替え部品(スペアパーツ オブ マッチング クアリテイ)の定義を、 « 指定業者によって生産された部品で、部品の品質を自動車組み立てのために使用されたあるいは使用される部品としての同等の品質に相当する、と保証できるもの » とそれぞれ定義しているのである。
しかし、同規定は当然ながら取替え部品を意匠保護の対象になるもの、とならないもの、とに区別する作業は行っていないことに注意すべきであろう。
従って、全ての取替え部品が完全に自由流通の対象となるかどうかは、先ほど述べた1998年欧州指令がどのように改正されるか見守る必要があることになる。
IV. 2004年9月欧州委員会が提案した1998年欧州指令98/71の改正案
この改正案は、取替え部品の、用途による区別を行っている。指令改正案によると、取替え可能な部品の第一市場は、複合製品(自動車)生産時の組み立て部品に関するものである。次にこの複合製品(自動車)が販売され消費者の手に渡ると、事故などの理由により取替え可能な部品(オリジナルパーツ)を取り替える需要が生じる。これが取り替え部品の第二市場である。本改正案はこの第二市場について提案を行っている。この場合の取替え部品は複合製品を元の外観に戻すため取り替えられるものでオリジナルパーツと同等のスペアパーツ、いわゆるmust matchパーツと呼ばれるものである。
改正案は、後者の取替え部品を意匠保護から除外して現在ばらつきのあるEU加盟国国内法を統一改正しようとの提案である。
その結果1998年欧州指令14条(経過措置)の次のように改正することを提案している。
《 欧州指令98/71/CEは次のように変更される:
第14条
1.複合製品の外観を初期の外観に修復するために使用される取替え部品の保護は、本欧州指令12条パラグラフ1の意味においての使用に関して存在しないものとする。
2.EU加盟国は、取替え部品の競合する製品間の選択が可能となるよう、消費者に取替え部品の出所について情報が与えられることを保障しなければならない。》
V. 取替え部品の可能な保護の方法について
上記指令案提案は採択されておらず、採択後EU各国国内法の改正にも時間がかかるところから、また改正法の効果は過去に遡及しないところから、外側から見える取替え部品(自動車製造時に装備されたオリジナルパーツ及び取替えパーツ)について国内意匠法による保護を例えばフランスで探ることはいまだ有効な方法である。
さらに、同欧州指令改正後も、形状を保護できるオリジナルスペアパーツとして、また自動車の元々の組み立て部品としてそれらの意匠保護を共同体意匠に求めることが可能なことは言うまでもない。
フランスでは意匠は、保護期限が最低70年の著作権によっても保護が可能である。ただし、著作権は創作日の証明及び所有権の証明が必ずしも簡単ではないという問題がある。
さらに外国意匠がフランスにおける著作権保護を享受するためにはベルヌ条約2条7及びフランス知的所有権法L511-11の条件を満たさなければならない。
例えば、日本の法律は形のある創作物に対して著作権による保護を与えていないので、フランスでもその創作物には意匠権による保護しか与えられないことに注意すべきである。
また意匠権が不在の場合不正競争で対抗することも全くの模倣品に対しては有効である場合がある。
©Cabinet Beau de Loménie/2004年11月
|